映画『ヒトラーの忘れもの』戦後の悲劇を描いた実話
あらすじ
第2次世界大戦後、デンマークの海岸沿いに残された無数の地雷を撤去するため、元ナチス・ドイツの少年兵たちが連れて来られる。彼らを指揮するデンマーク人軍曹はナチスに激しい憎しみを抱きながらも、無垢な少年たちが次々と命を落とすのを見て良心の呵責にさいなまれるようになっていく。
引用元:映画com.
デンマークで封印された実話
実は自国民でさえ知られざる歴史で、本作をきっかけに初めて紐解かれたという。
今では「世界一幸せな国」とも言われるデンマーク国にとって、もしかしたら触れられたくない黒歴史なのかもしれないと思った。
第二次世界大戦のさ中。
ナチスが米英軍の侵攻を防ぐために、デンマークの海岸に地雷を設置。その数は数十万個にものぼり、終戦後にデンマーク政府は撤去作業を命じたという。
駆り出されたのは捕虜となっていたドイツ兵で、大半は若い者たちだった。
映画では14人の少年兵が集められ、過酷な強制労働の実態を見せていく。
中には13歳の幼い少年兵もいた。
終戦後に自国の犯した罪を償うのは当然のことなのか、静かに疑問を投げかけてくる。
邦題はポップだけど、内容は重厚で、改めて戦争の過ちを見つめさせています。
犠牲になった少年兵
少年兵たちがどのような経緯でそこに辿り着いたかは分からない。
ユダヤ人迫害に加担し、民間人をも犠牲にしてきた者もいるかも知れない。根深い差別主義と愛国心を植え付けられ、軍へ志願してきた者もいるだろう。
その背景は良くも悪くも想像できるが、不安と恐れで脅える少年兵たちに胸が痛む。
彼らが背負う運命は、あまりに酷すぎると思った。
まともな訓練もないまま、いきなり1人で本物の地雷とを向き合わなければならない。一瞬の過ちが命取りとなって自爆してしまう。その恐怖は、常に銃口を突き付けられているのと同じではないかと思う。
また食事や水も与えられず、家畜の餌で飢えをしのぐほど追い込まれてしまう。
寝床は粗末な小屋に襲込められ、脱走しないよう鍵がかけられる。
逆らうことのできない者たちに、野蛮を働く人々の姿。
勝者と敗者が入れ替っても、終わらない悲劇を物語り愕然とする。
ラスムスン軍曹の中にみる救い
※ここからネタばれ含みます。
地雷撤去の現場を指揮したのは、デンマーク軍のラスムスン軍曹。
彼の憎しみは深い。
敗戦で撤退するドイツ兵とすれ違えば、暴力と暴言を浴びせる。オープニングで観るそのヒステリックな姿は、異常さを感じなくもない。
彼からすれば少年兵だろうが憎むべきドイツ国民で、少年たちが地雷で犠牲になろうが、餓死しようが容赦しない怒りが伝わってくる。
しかし彼らの心の叫びを聞いたとき、ラスムスン軍曹に少しずつ変化が現われる。
これが本作の最大の見どころだ。
迷いながらも、ラスムスン軍曹は地雷で犠牲になった者に手当てを受けさせ、悲しむ少年兵を励ます。また大量のパンを入手し、休暇日も与える。
ラスムスン軍曹と少年兵の過ごす安息の時間が眩しく、それが一層その後に待ち受ける現実を絶望へと落とし込んでいく。
誰もがドイツ軍を悪とみなし、復讐心に燃えていた時代。
しかし目の前にいるのは弱き敵で、自分たちと同じように祖国や家族を想い、小さな希望を持って生きている。
赦すことは自分を欺き、同胞を裏切ることなのだろうか。真の敵とはいったい誰なのだろうか。
ラスムスン軍曹の最後に起こす行動が、一筋の救いを見たように思った。
監督はデンマーク出身のマーチン・サントフリート。自国の史実をしっかり見つめて問題提起した姿勢がスゴイと思いました。
今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。