あらすじ
家庭内暴力を振るう父を射殺した15歳の少年リオと姉サラは、叔父グラントから追われる身となってしまう。アメリカ南西部をさすらう彼らは、西部きっての無法者ビリー・ザ・キッドと遭遇。そこへビリーを追う保安官パット・ギャレットが急襲し、激しい銃撃戦の末にビリーは投降、リオとサラはパットに保護される。しかし護送先のサンタフェの町で、リオたちを執拗に追ってきたグラントにサラが連れ去られてしまった。
引用元:映画com.
フィクションに史実を絡めた西部劇
舞台は19世紀のアメリカ西部開拓時代です。
この時代、必ずと言っていいほど極悪非道な男たちが登場し、略奪や暴行をエグいまでに描いていくものが多いので、西部劇は私の中で苦手なジャンルです。
正直、イーサン・ホークが出演しなければ観なかったであろう1本でした。
だけど観ていくうちに予想以上に引き込まれました。
面白いのは、15歳の少年リオの逃亡劇に実在したカリスマギャング、ビリー・ザ・キッドと、保安官パット・ギャレットという伝説的人物を絡めたところです。
主軸になっているのが少年の成長物語なので、西部劇ファンはビリーとパットを脇に置いたところに物足りなさを感じるかも知れません。
だけど少年の純粋な視点で見るからこそ、2人の生き様が物悲しくも魅力的に映り込んでいきました。
この映画をきっかけに、ビリーとパットについて知りたくなりました。
英雄視されなかったビリー・ザ・キッド
ビリー・ザ・キッド、映画を観るまでよく知りませんでした。
「弱きを助け強きをくじく」
そんな精神が民衆たちの支持を得たらしく、今も世界では伝説的アウトローとして人気があるようです。
リオがビリーに憧れたのは、必然的なように思いました。
リオは父親を銃殺してしまったことへの罪や恐怖に脅えているのが分かります。
そこで出会った悪名高きビリー。
破天荒で勇敢なアウトローは、思いのほか優しく人間味にあふれていました。
多くの罪を背負いながら堂々と生きるビリーに、リオが希望や救いを見い出すのに妙な納得感がありました。
リオにとってビリーこそ理解者のように見えたのでしょう。
だけどこの映画では、決してビリーを英雄視しませんでした。
脱獄したビリーは、リオに「自分の未来は無意味だ」と嘆きます。
初めて人を殺したときのことが忘れられず、ずっと脅えていると…。
ビリーは21歳で8人を殺した早撃ちガンマンと言われています。
パット・ギャレットの熱いメッセージ
※ネタばれ含みます
ビリーを背後から射殺した男として伝承されてきたパットですが、リオのヒロイズムが崩壊したとき、光が当たります。
振り返ると、パットはリオに無秩序な社会でも正義を貫くことの大切さを教え続けていたように思います。それはリオの姉を売春宿から連れ出し、悪党に決闘に挑む最後のシーンで集結し、深い感動へと仕上げていきました。
「希望が見つかるまで歩き続けること」
伝説の2人のカウボーイと出会い、リオが見つけた答えです。
敬遠されがちな西部劇ですが、人生は自分次第でいつでもやり直せる、というシンプルなメッセージが伝わり、とても分かりやすい作品になっていました。
もしかしたら、罪に苛まれている人にこそ届いてくる映画かも知れません。
カッコいいイーサン・ホークを観たい人や、西部劇初心者にとてもおススメな1本です!