あらすじ
人間を凶暴化させるウィルスが蔓延した世界を描くサバイバルアクション。ある朝、ロサンゼルスのアパートに住むエイデンが目を覚ますと、テレビに緊急放送の文字が並んでいた。外では人々が逃げ惑い、近くにヘリが墜落。やがてアナウンサーが、あるウイルスの発生を告げる。感染者は目から血を流し、叫び、人を襲うのだという。そしてウイルス発生から42日後、エイデンはついに、感染者が蔓延る外の世界へと足を踏み出すが……。
引用元:映画com.
ステイホームとリンクした自宅サバイバル
かつてはスプラッターホラーとしてB級路線を呈していたゾンビ映画だが、今や1つの枠組みとしてジャンルを確立させている。
これまで『28日後』『バイオ・ハザード』『アイ・アム・レジェンド』『ワールド・ウォーZ』など、多くのヒット作も誕生してきた。
ゾンビ映画と言っても作品ごと全くテイストの異なる世界を作り出し、極限状態で起きるサバイバルや人間ドラマ、壮大なスケール感が見どころとなって人気を集めるようになってきた。
そして本作。
これがまた異色な視点で描かれ、面白かった。
ゾンビサバイバルの中では、仲間との連帯感や、生き残りを懸けて炙り出されていく人間の本質を見せてくれるが、今回は1人自宅避難する男のサバイバルが描かれている。
世界が一変した日から感染者に脅え、孤独と向き合う主人公エイデン。
映画制作はコロナ禍以前だが、その姿はまるでステイホームを強いられた2020年とリンクし、エイデンの心情に、より寄り添うことができる。
もし本当に脅威のウイルスが蔓延る世となれば、自分もエイデンのように自宅にこもることだろう。
映画の中では、生存者が食料を求め外へと繰り出だすが、実際そんな勇気を持ち合わせている人は少ないと思う。
だからこそエイデンのとる言動は観る者と一体化させ、これまでにないゾンビ映画のリアルさを追及している。
世界の終末を1人で迎える恐怖と絶望
ときどき流れるテレビのニュース以外、外部から遮断された生活。
電話もネットも通じず、家族の安否を知る術もなく、「世界の終末」を1人自宅で迎えることの絶望感がエイデンに迫る。
ライフラインが閉ざされ、安全なはずの自宅には浴室天井やベランダからゾンビが侵入するという、逃げ場のない恐怖が増大していく。
そう、今回のゾンビは、「走る・ジャンプする・喋る」の進化系ゾンビだ。
恐らく『アイ・アム・レジェンド』辺りから走るゾンビが出現したが、今回はこの「喋る」がやたら不気味極まりない。
ブツブツ呟いたり、悪態を付いたり…。
まさに絶体絶命の日々。
感染するのが先か、正気を失うのが先か。
42日目のエイデンの決断、私にはよく理解できた。
物事は好転することはなく、待つのは「死」のみ。
人は1人で生きることはできない。
自分が大切に想う人、自分を大切に想ってくれる人、気にかけてくれる誰かの存在なくして、生きる意味はどこにあるのだろう。
エイデンの過酷さを観て、人とのつながりが生きる希望を見せてくれているのだと感じた。
ロマンスが起こしたアクション活劇
そんな絶望の淵にいたエイデンに、突如奇跡が起こる。
向かいのマンションのベランダで、エイデンと同じように避難する女性エヴァ。
彼女の存在を知ったエイデンは、これまでの意気地のないキャラから一転し、勇敢なサバイバルを仕掛けていく。
エヴァのSOSに応えるため、かなりの無茶ぶりを発揮する。
エヴァの部屋に行こうとするゾンビを大声で呼び寄せたり、死んでいるゾンビから鍵を奪ったり、別の住人の部屋に侵入したり。
前半の忍び寄る静かな恐怖とは打って変わり、怒涛のアクション活劇が展開される。
「守るべき者」や「仲間」を見つけたとき、人はこんなにも最強なポジティブ思考へと変わっていくものかと、感嘆するほどだった。
未知のウイルスとの戦いを、自宅で乗り切ろうとする男の物語。
まさにコロナ禍の今だからこそ、絵空事ではないリアルさを訴えかけているように思った。
今回はゾンビ映画で観られる残酷描写が少ないので、ゾンビジャンルが苦手な人も見やすい1本になっていると思う。
今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。