今日は大好きな映画『イル・ポスティーノ』について書きます。
アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、オリジナル音楽賞の5部門にノミネートされたイタリア(1995年)の珠玉の名作です。
あらすじ
ナポリ沖合の小島に、祖国を追放された詩人で外交官のパブロ・ネルーダが滞在することに。世界中から届くファンレターを配達するため、島の青年マリオが臨時配達人として雇われる。美しい砂浜でネルーダは自作の詩をマリオに聞かせ、詩の隠喩について語る。マリオはネルーダの温かい人柄に惹かれ、2人は友情を育んでいく。
引用元:映画com.
イタリア映画のノスタルジーに酔いしれる
日本では1996年に公開されたので、もう25年以上も前の作品です。
もはや古い映画の部類に入りますね。
当時ビデオ(懐かしい!)で観ましたが、この映画の酔い痴れ感はなかなか他では味わえないものがあります。
バンドネオンの優しい旋律が流れてくる中、映し出される夏の眩い景色に魅せられます。
陽光にきらめく碧い海。
カラフルな家が並ぶ漁村風景。
小高い丘を自転車で漕ぐ主人公マリオの陽炎。
ノスタルジックな映像が味わい深く、胸に沁み入ります。
愛らしすぎる主人公マリオ
引用元:IMdbより
主人公マリオは、原作では17歳の少年ですが、映画では30歳の設定です。
そのせいか、「仕事をしないで実家に暮らすマリオ」や、「詩人ネルーダと友人になりたくて近付く姿」だったり、「ネルーダへの不躾な質問責め」に違和感を持つかも知れません。
17歳の少年なら許容範囲ですが、30歳ともなると、その無知さはどうなの?と思わず笑いそうにもなります。
そんなマリオを、詩人ネルーダはどんなときでも紳士的に諭したり、温かく包み込んだりして、師弟とも友情とも言える関係を築きます。
そして幾度も交わされる2人の「詩」の語らい。
短い言葉の中にどんな想いが隠されているのか。
人によって感じ方は様々で、正解がないからこそ「詩」は読む人の心を満たしてくれます。
映画を観ている私も、マリオと共に詩に取りつかれていくような感覚になりました。
主人公を演じたトロイージが命懸けで伝えたかったもの
主人公マリオ役を演じたマッシモ・トロイージは、撮影終了してから12時間後に心臓病で亡くなりました。
アメリカで心臓移植手術をする予定でしたが、撮影を優先させたそうです。
この映画は死を予感した人間が、魂を込めて作り上げた作品だということが分かります。
劇中、マリオが祖国に帰ったネルーダに贈ったテープがあります。
「あなたが帰ったとき、素敵なものはみんな持って帰ったと思った。でも本当はいろいろなものを残してくれた」
マリオが身近なものの美しさに気付き、島に息づく音の数々を拾い上げました。
波や風、教会の鐘、お腹に宿る子供の心拍音。
そして星降る夜の音…。
映画がロマンチックに昇華され、観る人の心を彩ったシーンです。
役者トロイージが命懸けでこの映画を完成させたかったのは、恐らくこの素敵な贈り物を多くの人に届けたかったのではないかと思います。
そう、この世に生きる美しさや愛おしさを、映画に託したのではないかと。
トロイージやマリオの想いが交差して、ラストは熱いものが込み上がってきます。
大切に思うものや、美しいと感じたもの、心から大好きなものを大切な誰かに伝えること。
それは自分の人生を大きく意味付けすることのように思いました。
だから私も伝えていきたい。
そう思ったとき、この映画を語り尽くしたくなります。
最初に書く映画をどれにしようか悩みましたが、多くの人に観てほしい映画は『イル・ポスティーノ』だと思ったので、記念すべく1作目として紹介しました。
この感動を共有できたら嬉しいです。
今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。