映画『MINAMATA ミナマタ』はジョニー・デップの入魂の一作!

引用元:映画com.

 

あらすじ

1971年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミスは、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市チッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。引用元:映画com.

 



心揺さぶられるジョニー・デップの演技

引用元:映画com.

あのジョニー・デップが「水俣病」を題材にした映画に出演すると聞いて、驚きました。

製作も兼任してるので、かなり意欲的な作品であることが伺えます。

でも何故なんだろう?

日本で起きた公害事件に焦点を当てるなんて…。

そんな戸惑いと疑問を持っていたせいか、物語が始まってもしばらくスター、ジョニー・デップとして鑑賞している自分がいました。

 

映画はすぐにユージン演じるジョニーが、昭和の日本を訪れる風景を映します。

家に招き入れられたジョニーが、靴を脱ぐ、畳に座る、ちゃぶ台で和食を頂く、布団で眠る、そんな日本の素朴な暮らしに戸惑っている様子が見られます。

流れる気まずい空気。

それはさながら、日本に来日したジョニーの密着ドキュメンタリーを観ているようでした。

 

変化したのは、水俣病患者の少年や、被害者家族との交流が始まった辺りです。

ジョニーは被害者と共に立ち上がる伝説的カメラマンのユージン・スミスへと化し、完全に物語に溶け込んでいきました。

真摯に挑むその姿は、心を揺さぶられます。



写真を撮ることの重み

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戦争カメラマンとして活動したユージン・スミス

劇中、印象深い言葉を残しています。

「写真は撮る者の魂の一部も奪い去る。つまり写真家は無傷ではいられない。撮るからには本気で撮ってほしい。」

これまでユージンの見てきた世界の惨状と、そこで葛藤し続けた日々が伝わってくるようでした。

それだけに彼の撮った写真は、静かな怒りと哀しみを訴えかけています。

 

映画のラストシーンにもなった写真「入浴する智子と母」は、ひと際、話題となりました。

水俣病で寝たきりの子供を母親が入浴させている姿を収めた1枚です。

母子の無償の愛と、嘆きを表現していました。

この写真を始めとする被写体となった本人や家族たちが、どんな想いで撮影を引き受けたのか、心中を察すると胸が締め付けられます。

真実をありのままに伝える、唯一の方法だったのかも知れません。

ユージンはそんな彼らと一体化し、1枚1枚魂を込めてシャッターを押し続けたように見えます。



多くの日本人に観てほしい作品

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1974年、外国から来たカメラマンによって世界に知らしめることになった「水俣病」。

2013年の国会では、当時の首相が「水俣病は終わった」と発言しています。

私も小学校の授業で日本四大公害病として学んだことを記憶していますが、その教育を風化させていたことに気付きました。

 

だけど2021年、映画『MINAMATA』が公開され、再び「水俣病」が注目されました。

今も病と闘い、救済を求める人たちがいるー。

人生を狂わされ、幕を閉じていった人たちの無念さを忘れてはいけないー。

口惜しくも2人の外国人によって、日本の闇が暴かれました。

本作を観た日本人は、福島第一原発事故を思い起こさせる人も少なくないかも知れません。

 

エンディングは「水俣病」だけではなく、世界で起きている環境被害の写真の数々を映し出します。

ジョニー・デップの深い関心と深い情熱から作られた映画は、環境被害は身近で、いつでも誰でも当事者になり得ることを改めて突き付けています。