前回の記事の続きです。↓
『ベニスに死す』の映画に陶酔しきった私は、その世界観を味わい尽くしたくて、ついにイタリアへと旅立ちました。(これは2006年10月の旅日記です。)
メインの舞台となった場所は、ベニス本島から水上バスで20分ほど先にあるリド島です。


10月のオフシーズンのため、船内は人がまばらでした。
対岸に見えるベニス本島が遠ざかり、穏やかな海原を走ります。


リド島はヴェネツィア国際映画祭の開催地ですが、高級リゾート地としても人気があります。南国ムードが漂う優雅な街並みです。
船着き場から歩くこと10分ほど。
ついに『ベニスに死す』で、老作曲家アッシェンバッハと少年タージオが運命的な出会いを果たしたホテル・デ・バンに辿り着きました。
エレガントな装飾が施され、クラシカルな雰囲気を漂わせています。
このホテルは1900年に創設され、原作者トーマス・マンも実際このホテルに滞在し、『ベニスに死す』さながらの体験をして本に書き起こしたそうです。
映画のロケ地と、原作者の実話の舞台が一緒なので、感慨もひとしおでした。
アッシェンバッハがタージオの母親に声をかけようとした幻のシーンは、恐らくここで撮影されました。
映画の香りを色濃く感じる場所です。
映画の名シーン↓
ホテルから徒歩2~3分のところに、ビーチがあります。
映画ではホテルが海岸に面しているように見えましたが、道路を挟んだ先にありました。
まるで神殿のようにそびえ立つホテル・デ・バン。
あの窓からアッシェンバッハは、砂浜を歩くタージオを眺めていました。
映画名シーン↓
海で戯れるタージオと、それを愛おしく見つめるアッシェンバッハ。
木陰で物書きをするアッシェンバッハと、ふっと振り返るタージオ。
そしてタージオの姿を目に焼き付けて息絶えるアッシェンバッハのラストシーンが思い起されます。
場所は変わって、本島ベニスへ。
散策に行くタージオ一家を、アッシェンバッハが追ったサンマルコ広場やベニスの街。
映画ではコレラ菌が蔓延して物々しい雰囲気でしたが、どこを切り取ってもロマンチックな風景に夢心地の気分になりました。


この旅は、『ベニスに死す』の舞台となった場所を巡り歩き、心ゆくまでの映画世界を追体験することができました。
特にリド島の海を見たときは、テーマ曲であるグスタフ・マーラーの「交響曲第5番アダージェット」が脳内に駆け巡り高揚感に浸りました。
映画名シーン↓

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。