過去のある事件をきっかけに警察官として一線を退いたアスガーは、いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、交通事故の搬送を遠隔手配するなど、電話越しに小さな事件に応対する日々を送っている。そんなある日、アスガーは、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件に対処しなければならず……。(2018年製作/88分/G/デンマーク)
引用元:映画com.
サンダンス映画祭で発掘された異色サスペンス!
2022年になってまだ1か月を過ぎたばかりですが、この映画は間違いなく今年のマイベスト映画になりそうです。
サンダンス映画祭で観客賞を受賞しているのも納得です。
このサンダンス映画祭は、世間であまり注目されていないようなインディーズ作品をお披露目する映画祭なので、新進気鋭の監督や俳優たちの発掘の場なっていたりします。
過去には『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、『レザボア・ドッグス』、『ソウ』、『セッション』などがサンダンスで上映されたことで脚光を浴び、世界に送り出されていきました(当時無名だったコーエン兄弟やクエンティン・タランティーノの成功のきっかけを作ったのもこの映画祭です)。
上映される作品は独創的な作品が多く、低予算で娯楽性に欠けます。
良くも悪くも「ちょっと変わった映画」だったりするので、他にはないゾクゾクとした興奮やマニアックな世界観に酔い痴れることができます。
まさに本作も、サンダンス映画祭だからこそ観られるような作品でした。
サンダンス映画祭の観客賞にノミネートされた作品のレビューです。
おススメな映画です。↓
ワンシチュエーションの面白さ
緊急通報司令室のひと部屋(正確にはふた部屋)だけの空間で、ストーリーが進行していきます。
こう書くと、視覚的な動きがなく退屈なものをイメージするかも知れません。
だけど映画冒頭からコール音が鳴り響き、ただならぬ緊迫感が漂い一気に鑑賞者を引き込んでいきます。
通報者と、それに応対するオペレーター、アスガー。
会話劇だけで電話の向こうの光景をありありと浮かびあがらせ、次なる展開に高揚感が高まっていきます。
「何が起きているのか?」
声と、音だけで事件を解決しようとする構成が、妙なリアリティとスリルを生み出しています。
ワンシチュエーションの中で描かれるアスガーの苛立ちや焦燥感、安堵や嘆きといったあらゆる感情が交錯するので、一瞬たりとも目が離せません。
どんでん返し映画としてもおススメ!
「アメリカの批評家サイト」で満足度100%の評価を得たのは、誰もが予測不能で衝撃を受けたからでしょう。
長い間合いで見せていくヨーロッパ映画特有の演出や、思いもよらぬ仕掛けは絶品です。
見所となっていくのは、アスガーの燃えたぎる正義感かも知れません。
現場に向かえない限界に苛立ちが達したとき、アスガーは鑑賞者を置き去りにするほど暴走していきます(笑)。
とにかく独りよがりで情報を仲間と共有しません。
オペレーターとしての仕事の領域を超え、遠隔で人を動かそうとする無謀さに思わず唖然としてしまいますが、それこそ驚きの展開を暗示させていたことを知ります。
どんでん返し映画として観るのも楽しいですが、実は感動も挟まれています。
エンディングで想いが集結されたとき、人の持つ言葉の力に胸が熱くなりました。
過去記事の「どんでん返し映画10選」にランクインしてもいいかも知れません。↓