映画『ガタカ』夢を共有した友情に心揺さぶられる

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引用元:IMDb

1997年製作/106分/アメリカ 

 

あらすじ

遺伝子操作で生まれた“適性者”が社会を支配する近未来。自然出産で誕生したビンセントは、“不適正者”として冷遇される人生を歩んでいた。彼は幼い頃から宇宙飛行士を夢見ていたが、それは適性者のみに許される職業だった。ある日、ビンセントはDNAブローカーの仲介で、下半身不随となった元水泳選手ジェロームの適性者IDを買い取る。ジェロームに成り済まして宇宙局「ガタカ」に入社したビンセントは、努力の末についにタイタン探査船の宇宙飛行士に選ばれるが……。アンドリュー・ニコルの監督・脚本デビュー作。

引用元:映画com.

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みみ

今回は1997年の少し古めの映画です。

私の好きな映画ベスト20以内に入るので、書き残したく記事にしました。 

劣等感への悔しさと怒り

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引用元:IMDb

「できない」「無理」を両親に言われ続けてきた主人公ビンセント(イーサン・ホーク)。

当然かもしれない。

優秀な遺伝子を持つ弟に比べたら、ビンセントは病気のリスクもあれば、学力や身体能力も劣っている。

自然出産で生まれたビンセントがいくら足掻いても、遺伝子操作された弟にかなうはずがない。

小さなうちから兄弟で優劣を付けられ、どれほどの敗北感を抱えて大人になったのか想像できる。

自分より優秀な人間が近くにいれば、誰もが自身の限界を知る。

大抵の者は、選択肢の狭められた人生を宿命として受け入れると思う。

だけどビンセントは言い放った。

「僕に何ができて何ができないか、決めつけるな! 」

彼は科学の力を超えた自分の可能性を信じようとしていた。

社会的不適正者としてずっと冷遇を受けてきたことへの悔しさや怒りが、その気持ちを加速していったように見える。

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みみ

2011年にNASAが選ぶ「現実的なSF映画」第1位に選ばれた作品です。

 

夢を共有した友情

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引用元:IMDb

ビンセントに協力したのは、事故で下半身不随となったジェロームジュード・ロウ)だった。

ジェロームは宇宙飛行士として適正な遺伝子を持つ自分のIDを提供し、それを持ってビンセントはガタカ社に潜入することができた。

お互い最初こそビジネスの関係だったが、いつしか夢を共有し、なくてはならない存在へと変わっていく。

これこそ映画の最大の見どころだと思う。

正体を暴かれまいとする2人の執念は凄まじいものを感じる。

ビンセントは毎朝体毛を落とし、職場でも毛髪や皮脂が落ちないよう注意を払う。激しいトレーニングが苦しくとも、何食わぬ顔を装い、優秀な人間を演じ続ける

一方のジェロームは、ガタカ社提出用のために、自分の血液や尿のサンプルを採取し続ける日を送る。

突然自宅訪問しに来た捜査官の前では、健康体の自分を必死で演じる。動かない下半身でリビングのソファーに自力で座ろうとする一幕は、ジェロームの気迫が溢れていた。

何者にも邪魔されまいとする2人の並々ならぬ信念が、胸を熱くさせる。

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みみ

若かりしイーサン・ホークジュード・ロウが眩しいです。

 

夢の果てにみるもの

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引用元:IMDb

※ここからネタばれ含みます。

身分詐称してまで果たそうとした「宇宙飛行士」への道。

ビンセントは果てしない宇宙に、ひたすら夢を馳せたのだろう。

心臓疾患を持っているビンセントは、宇宙から戻ってくることができないかも知れない。夢を果たすということは、身を滅ぼすことにもつながっているようで、その決意と覚悟に胸が締め付けられる。

ジェロームにとっても同じだ。

ビンセントが夢に近づくたびに、自分の存在意義を見失っていくのを感じる。

しかし2人には、決然としたものがある。

不可能への挑戦。

たとえその後に何が起きようと、突き進むことが人生の答えとしたのだと思う。

SF映画にジャンル分けされるが、まぎれもなく人生賛歌の作品だ。

迷う人や自信をなくした人へのエールが感じられる。

そしてラストに残す余韻が格別で、いつまでも酔い痴れていたいと思ってしまう。

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みみ

音楽はピアノ・レッスンで一躍有名になったマイケル・ナイマンが担当しています。