あらすじ
スカヴと呼ばれるエイリアンの攻撃により地球が壊滅し、生き残った人類は遠い惑星へと移住を余儀なくされる。最後まで地球に残り監視任務に就いていたジャック・ハーパーは、ある日、墜落した謎の宇宙船の中で眠っている美女を発見。彼女を保護したジャックだったが、そこへ現れたビーチと名乗る男に捕らわれてしまう。ビーチはジャックに驚くべき真実を告げ、そのことからジャックと地球の運命が大きく動き始める。
引用元:映画com.
分かりやすいSFストーリー
舞台は今から約55年後の2077年です。
トム・クルーズのSF映画では『宇宙戦争』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』といったエイリアンとの熾烈な戦いが繰り広げられていましたが、本作でも地球を壊滅させた異星人(スカヴ)との熱戦を極めています。
SF映画といえば壮大なストーリーや派手なバトルアクションが見どころですが、『オブリビオン』は主人公の内面に寄せたヒューマニズムな作りで、感情移入がしやすいSFになっていました。
何せ地球を守る任務の遂行は、トム・クルーズ演じるジャック一人だけ!(今回もすごい大役ですよ)
孤独に地球をパトロールするジャックを追い続けます。
壊滅した地球の中で見つける平和だった時代の残骸(本やレコード、古びた家)は、最高のノスタルジーとなってジャックに好奇心と迷いを起こしていきます。
特に音楽は時代を表すもの。
レコード選曲をプロコル・ハルムの「青い影」(1960年代の名曲)にする演出にがっちり心つかまれ、ジャックとともに一気にセンチメンタルな感情が襲ってきました。
音楽の力は大きいですね。
そうしたジャックのふっとした行動や変化していく心理をじっくり見せていくので、分かりやすいSFドラマとなっています。
しかし中盤、睡眠カプセルで眠る女性を救出してから、真実を探る旅へと導かれ、物語は加速していきます。
この明かされる真実が凄かった…!
実はあちらこちらに伏線が張られていたことを知り、この映画が一筋縄ではいかないことを実感しました。
本物にこだわったリアルで美しい風景
安定のトム・クルーズ映画ですが、コクピット席で操縦する姿はまさに『トップガン』を彷彿し、ファンでなくても興奮したものを覚えます。
でもこれ、CGではなく全て本物で撮影していたそうです。
あの空中で回転する格闘シーンもカメラが動いていたわけではないんですね。トム・クルーズは意気揚々と演じたようですが、回る高速ジェットコースターは酔ってしまいそうな迫力です。
また崩壊したエンパイアステートビルや自由の女神像など、荒廃したニューヨークの街並みを巨大セットで再現したというから驚きです。
地上1000m上空から見下ろす美しい風景も、アイスランドで撮影されたようです。
いくらでもCGで駆使できそうですが、あえてリアルにこだわった監督の世界観が見事な映像美を作り出しています。
私が特に心奪われたのは、ジャックたちの居住空間「スカイタワー」でした。
洗練された未来感たっぷりな部屋で生活する姿は、とてもスタイリッシュです。
食事も全てレトルトですが、優雅な食事風景がまた美味しそうなんですよね。
壊滅した地球に取り残された生活でありながら、憧れを募らせてしまうほどおしゃれです。どこもかしこも、ビジュアルセンスが光っています。
最後に描いたのは魂の救済
※ここからはネタばれします。
オンリーワン。
そう、人は誰でも他者とは違う「無二の存在の自分」を生きています。
特にジャックは地球をただ一人守ることが命じられた特別な人間であり、選ばれしヒーローでした。だからこそジャックの辿り着いた真実は受け入れがたいものでした。
まさか地球を守っていたはずの自分が、異星人に加担していただなんて。
まさか自分はクローン人間の一人だったなんて。
(ユアン・マクレガー主演の『アイランド』並みの驚愕ぶりです。)
「汚染区域」に近寄れなかったのも、クローンの自分と遭遇しない防止策だったとは!
この次々と明かされる怒涛の展開は、見ていて爽快感を感じるほどでした。
やっぱりトム・クルーズ映画は裏切らない。ロマンス混じりのSFドラマで終わらないんですね。
核爆弾を持って敵地に入り込み、身を挺して地球を守ったジャック。
愛する女性との夢を残し、使命感を持って燃え尽きた男。最後までカッコ良く、切ないです。
量産されたクローン人間でも、その中にある記憶や感情が生き続けていることを希望として描いています。
このラストが、とっても多幸感に浸れていいんですよね。
私の中で、トム・クルーズ主演映画の上位にくる作品です。
今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。